自己破産すると退職金はどうなる?会社を辞める必要・評価額・勤務先への影響を司法書士が解説
「自己破産をすると、会社を辞めて退職金を差し出さなければならないのだろうか」
「退職金の見込額を会社に聞けば、破産を知られてしまうのではないか」
このような不安から、返済が難しくても相談を先延ばしにする会社員の方がいます。
結論からいうと、自己破産を申し立てるために会社を辞める必要はありません。在職中の退職金は、通常、将来受け取る可能性のある財産として評価されますが、退職金の全額をそのまま裁判所へ支払うわけでもありません。
ただし、退職が近い(自己破産の申し立て前に退職をする予定がある)場合、すでに退職金を受け取った場合、退職金見込額が大きい場合には、管財事件になる可能性や手続費用への影響があります。
この記事では、自己破産における退職金の扱いを、在職中・退職予定・受領後に分けて分かりやすく解説します。
この記事でわかること
- 自己破産をしても会社を辞めなくて良い理由
- 在職中の退職金がどのように評価されるか
- 退職予定・受領後で扱いが変わるポイント
- 勤務先に知られず資料を準備できる可能性
- 司法書士へ相談するタイミング

自己破産をしても会社を辞める必要はありません
自己破産は、返済できない状態にある方が、裁判所を通じて生活の立て直しを図る制度です。
そのため、申立てのために退職することは要件ではありません。むしろ、手続後の生活を安定させるためにも、現在の仕事と収入を維持することが大切です。
退職金のために退職を命じられるわけではない
在職中の退職金は、現時点ですぐ全額を受け取れる現金とは異なります。将来退職したときに支給される可能性がある権利として、一定額が財産評価の対象になります。
裁判所や破産管財人から「退職して退職金を受け取りなさい」と求められるわけではありません。
また、自己破産をしたことだけを理由に会社は解雇できるものでもありません。ただし、一部の資格・職業には破産手続中の制限があるため、職種によっては個別確認が必要です。
関連記事:会社員が自己破産した場合の仕事への影響
自己破産では退職金の全額が処分されるわけではない
退職金請求権には、法律上、差押えが禁止される部分があります。破産手続でも、差押禁止財産は原則として破産財団に含まれません。
さらに、在職中は本当に退職金を受け取るか、いつ退職するかが確定していません。そのため、実務では将来の不確実性も考慮して評価されます。
在職中は見込額の一部が評価対象になることが多い
在職中で退職予定がない場合、退職金見込額の一定割合を財産として評価する運用が一般的です。
実務上は退職金見込額の8分の1を評価する例が多く見られますが、全国一律の数字ではありません。裁判所、退職時期、勤務先の制度、勤続年数などによって扱いが異なります。
たとえば、自己都合で現在退職した場合の退職金見込額が800万円なら、8分の1評価をする運用なら評価額の目安は100万円となります。
ただし、「100万円をすぐ裁判所へ納めれば必ず解決する」という意味ではありません。他の預金、保険、車、不動産などと合わせて財産状況を確認し、管財事件になるか、自由財産の拡張が認められるかなどを検討します。
退職が近い場合は評価割合が高くなることがある
すでに退職届を提出している、退職日が決まっている、定年退職が目前であるといった場合は、退職金を受け取る可能性が高くなっています。
そのため、在職中でも通常より高い割合で評価されることがあります。退職直前に自己破産を検討している方は、申立時期によって扱いが変わる可能性があるため、自己判断で退職や退職金の受領を進める前に相談してください。
退職金を受け取った後は預金・現金として扱われます
すでに退職して退職金が支給された場合、将来の退職金請求権ではなく、手元の現金や預金として評価されます。
受領した退職金を生活費や引っ越し費用に使った場合でも、使途の説明や資料の提出を求められることがあります。
申立て直前の移動や名義変更は避ける
退職金を家族名義の口座へ移す、一部の債権者だけにまとめて返済する、高額な買い物をするなどの行為は、手続上問題になる可能性があります。
財産を隠す意図がなかったとしても、説明が難しくなり、破産管財人による調査や免責判断に影響するおそれがあります。
退職金を受け取る予定がある場合は、受領前に専門家へ相談し、生活に必要な支出も含めて記録を残しましょう。
関連記事:自己破産前にしてはいけないこと
退職金見込額はどのような書類で確認する?
自己破産の申立てでは、退職金制度がある場合、退職金見込額を確認できる資料の提出を求められることがあります。
代表的な資料は、勤務先が発行する退職金見込額証明書です。
会社の証明書を求めにくいとき
「破産を疑われたくないので、会社に証明書を頼みにくい」という方もいます。
裁判所の運用や勤務先の規程によっては、次の資料を使って見込額を計算し、説明できる場合があります。
- 就業規則や退職金規程
- 現在の給与明細
- 勤続年数が分かる資料
- 会社の退職金計算表
- 退職金制度に関する社内資料
どの資料で代替できるかは、申立先の裁判所や事案によって異なります。勤務先へ証明書を請求する前に、依頼する司法書士や弁護士へ相談することをおすすめします。
退職金制度がない場合
勤務先に退職金制度がない場合は、そのことが分かる就業規則や会社の回答書などを用意することがあります。
「長く勤めているから退職金があるはず」、「中小企業だからないはず」と推測せず、就業規則、雇用契約書、社内制度を確認しましょう。
会社に自己破産を知られる可能性は?
裁判所から勤務先へ、自己破産したことが通常一律に通知されるわけではありません。
そのため、給与振込や通常の勤務を続けながら、会社に知られず手続が進むケースはあります。
ただし、次のような場合は勤務先に知られる可能性が高まります。
- 会社から借入れがあり、会社が債権者になる
- 給与や退職金について差押えを受けている
- 退職金見込額証明書を取得する際に理由を詳しく聞かれる
- 官報を勤務先の担当者が確認する
- 資格制限が仕事に直接関係する
会社からの借入れだけを除外して自己破産することは原則としてできません。すべての債権者を申告する必要があります。
勤務先への影響が心配な方は、会社からの借入れ、社内預金、財形貯蓄、労働組合や共済からの借入れがないかも相談時に伝えてください。
退職金が多いと自己破産できない?
退職金見込額が多いからといって、直ちに自己破産できなくなるわけではありません。
ただし、一定額以上の財産がある場合は、破産管財人が財産を調査する管財事件になる可能性があります。予納金などの追加費用が必要になることもあります。
また、収入と財産の状況によっては、財産を処分せず返済額を減らす個人再生が適している場合もあります。ただし、個人再生でも退職金見込額は清算価値に影響するため、「個人再生なら退職金を考えなくてよい」とは限りません。
任意整理、個人再生、自己破産のどれが適切かは、借金額、毎月の返済可能額、住宅、車、保険、退職金などをまとめて比較して判断します。
関連記事:任意整理・個人再生・自己破産の判断表
関連記事:個人再生の清算価値
司法書士へ相談する前に準備すると良い資料
最初の相談時に退職金見込額が確定していなくても、相談は可能です。
次の資料があれば、手続の見通しを整理しやすくなります。
- 給与明細
- 源泉徴収票
- 就業規則や退職金規程
- 勤続年数が分かる資料
- 預金通帳
- 保険証券や解約返戻金資料
- 借入先と残高が分かる書類
勤務先へ証明書を請求する前の段階でも構いません。まず手元の資料で概算し、正式な申立てに必要な書類を確認していきます。
横濱つきあかり法務事務所では、仕事を続けながら自己破産を検討する方の相談をお受けしています。退職金や勤務先への影響が心配な場合も、状況に合わせて確認事項をご案内します。
よくある質問
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自己破産をすると会社を辞めなければなりませんか?
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いいえ、自己破産の申立てのために退職する必要はありません。仕事と収入を維持したまま手続を進めるケースが一般的です。ただし、一部の職業には手続中の資格制限があります。
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在職中でも退職金を全額取られますか?
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在職中の退職金全額がそのまま処分対象になるわけではなく、退職金見込額の一部を財産として評価するのが一般的です。ただし、評価方法は裁判所や退職時期によって異なります。
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退職金見込額証明書を会社に頼むと破産が知られますか?
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証明書を依頼しただけで自己破産だと決まるわけではありませんが、理由を聞かれる可能性はあります。退職金規程と給与資料から計算した書面で代替できる場合もあるため、先に専門家へ確認してください。
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確定拠出年金やiDeCoも退職金として処分されますか?
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企業型確定拠出年金やiDeCoは、通常の退職金とは異なる法的な保護があります。ただし、制度の種類や受領後かどうかで確認が必要なので、加入資料を相談時に提示してください。
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退職金が多い場合は個人再生を選ぶべきですか?
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一概にはいえません。個人再生でも退職金見込額が清算価値に算入され、返済額に影響することがあります。借金額、収入、他の財産、住宅の有無を合わせて比較します。
まとめ|退職や証明書の請求をする前に相談しましょう
自己破産をしても、会社を辞める必要はありません。在職中の退職金は将来受け取る可能性のある財産として評価されますが、全額がそのまま処分されるわけではありません。
一方、退職日が決まっている場合や、すでに退職金を受け取った場合は評価方法が変わります。申立て直前の退職、送金、返済を自己判断で行うと、手続が複雑になることがあります。
横濱つきあかり法務事務所では、会社員の方からの債務整理相談を受け付けています。勤務先への影響や退職金が心配な方も、現在の仕事を続けることを前提に、任意整理・個人再生・自己破産を比較してご案内します。
まだ退職金の資料がそろっていなくてもご相談いただけます。給与明細や借入状況が分かる資料をお持ちください。
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🖋この記事の監修者
司法書士・行政書士 小林信之介
横濱つきあかり法務事務所
借金問題(債務整理)・相続手続きなどを中心に対応しています。





