実家を兄弟の共有名義で相続しても良い ?売却・管理・次の相続で困るケースを司法書士が解説
親が亡くなり、実家を兄弟で相続することになった時、「公平にするため、とりあえず2分の1ずつ共有名義にしよう」と考える方は少なくありません。
しかし、共有名義は将来の売却や大規模な変更をする際に全員の協力が必要になりやすく、時間がたつほど関係者が増え大変になるおそれがあります。
結論からいうと、兄弟の共有名義が直ちに間違いというわけではありません。ただし、実家を誰が使うのか、いつまで保有するのか、費用を誰が負担するのかを決めないまま共有にすることはおすすめできません。
相続登記を急ぐ場合でも、法定相続分でいったん共有登記をする前に、今後の利用・売却方針まで含めて検討しましょう。
この記事でわかること
- 実家を兄弟の共有名義にするメリットと注意点
- 売却・賃貸・修繕で合意が必要になる場面
- 次の相続で権利関係が複雑になる理由
- 共有を避ける遺産分割の方法
- すでに共有名義にした場合の整理方法

実家を兄弟の共有名義にすることはできる
相続人が複数いる場合、遺産分割協議で合意すれば、実家を兄弟の共有名義にすることができます。
たとえば、相続人が長男と次男の2人で、それぞれ持分を2分の1として相続登記をする形です。
現金が少なく、不動産の価値が遺産の大部分を占める場合には、共有が一見公平に見えることがあります。そのため、遺産分割を早くまとめたいときにも選ばれやすい方法です。
一方で、登記上の持分が平等でも、実際に住む人と住まない人、固定資産税を払う人、修繕を手配する人の負担は同じとは限りません。
「持分を半分ずつにすれば問題は解決する」とは限らない点が重要です。
共有名義の実家で困りやすい5つの場面
1.実家を売りたい時期が合わない
共有不動産全体を売却するには、原則として共有者全員の協力が必要です。
一人が「空き家になる前に売りたい」と考えても、もう一人が「思い出の家なので残したい」と反対すれば、すぐには売却できません。
持分だけを売ること自体は可能な場合がありますが、第三者が共有関係に入るため、通常の自宅売却とは事情が大きく異なります。安易に持分買取業者へ売る前に、司法書士へ相談した方が安全です。
2.修繕や管理費の負担でもめる
屋根、外壁、給湯設備などの修繕にはまとまった費用がかかります。
共有者の内の一人がその家に住んでいる場合、住んでいない共有者から「利用している人が全額払うべきだ」と言われることもあります。
反対に、資産価値を維持するための費用として持分に応じた負担を求めたい場面もあります。
固定資産税、火災保険、庭の手入れ、空き家管理なども含め、共有にする場合は負担方法を文書で決めておくことが大切です。
3.住んでいる兄弟と住んでいない兄弟で不公平感が生じる
長男が実家に住み続け、次男は別の場所で暮らしている場合、次男が自分の持分を使えない状態になります。
家賃に相当する支払いが必要か、税金や修繕費をどう清算するかは、家族関係や合意内容によって異なります。
口約束のまま年月がたつと、親の介護負担など過去の事情まで持ち出され、話し合いが難しくなることがあります。
4.共有者の一人が認知症になる
共有者が判断能力を失うと、本人の意思確認が必要な売却や重要な契約を進めにくくなります。
成年後見制度の利用が必要になる場合もあり、家族だけの話し合いでは完結しません。
将来売却する可能性が高い実家を長期間共有するなら、共有者の年齢や健康状態も考慮する必要があります。
5.次の相続で共有者が増える
共有者である兄弟の一人が亡くなると、その持分は配偶者や子などへ相続されます。
2人の共有だった実家が、次の世代では3人、4人と細分化されることがあります。遠方に住む人や面識の薄い人が共有者になると、売却や管理について全員の意思をそろえる負担が大きくなります。
相続登記をしないまま次の相続が発生すると、必要な戸籍や協議も増えやすくなります。
関連記事:数次相続・再転相続とは?遺産分割協議に誰が参加するのか
共有名義を避ける主な遺産分割方法
現物分割:一人が実家を相続する
実家に住む人や管理を担当できる人が単独で相続し、ほかの相続人は預貯金など別の財産を取得する方法です。
財産全体の内容によっては、完全に同じ金額にそろわないこともありますので、金額だけでなく管理負担や売却費用も含めて話し合います。
代償分割:一人が実家を取得し、ほかの相続人へ代償金を払う
実家を取得する人に支払能力がある場合、共有を避けやすい方法です。
不動産価格と代償金の決め方、支払時期を遺産分割協議書に明記します。住宅ローンを利用できるか、税務上の確認が必要かについては、金融機関や税理士にも相談します。
関連記事:遺産分割協議書とは?
換価分割:実家を売却して代金を分ける
誰も住む予定がなく、維持も難しい場合には、実家を売って手取り額を分ける方法があります。
売却前に相続登記が必要です。遺産分割協議書には、売却代金から仲介手数料、登記費用、残置物処分費などを差し引いた後の分配方法まで記載しておくと、後の争いを防ぎやすくなります。
共有名義が適することもある
共有が常に不適切とは限りません。
短期間のうちに全員の合意で売却する予定が明確な場合や、共同利用と費用負担のルールが定まっている場合には、共有を選ぶこともあります。
ただし、「今は決められないから」という理由だけで共有にする場合は注意が必要です。
少なくとも、利用者、管理者、税金と修繕費の負担、売却を検討する時期、一人が持分を手放したい場合の手順を確認しましょう。
すでに兄弟の共有名義にした場合の整理方法
すでに共有登記をしていても、共有者間で合意できれば、一人へ持分を移したり、不動産全体を売却したりできます。
ただし、持分の売買や贈与には、登記費用だけでなく税金が関係することがあります。無償で名義を移せば贈与税の問題が生じる可能性もあります。
共有者間で協議がまとまらない場合は、共有物分割請求など法的手続の検討が必要になることがあります。紛争性がある相談は、弁護士の業務領域です。
司法書士は、相続関係の調査、遺産分割協議書の作成支援、相続登記、合意後の持分移転登記などを扱えます。税額の判断や申告は税理士、対立する当事者間の代理交渉は弁護士へつなぐ必要があります。
相続登記の期限にも注意する
不動産を相続したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請することが原則として義務付けられています。
遺産分割がまとまらない場合でも、期限を放置して良いわけではありません。相続人申告登記など、その時点で利用できる制度を検討します。
「共有にするか決められない」、「売却して分けたいが手順がわからない」という段階でも、早めに司法書士へ相談してください。
関連記事:相続登記とは?義務化の内容・手続きの流れ・必要書類
よくある質問
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兄弟2人で法定相続分どおりに登記すれば、遺産分割協議は不要ですか?
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法定相続分による共有登記ができる場合はあります。ただし、それで実家の利用・売却・費用負担が決まるわけではありません。後のトラブルを避けるため、実際の分け方を先に検討することをおすすめします。
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共有者の一人だけで実家を売れますか?
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不動産全体の売却は、原則として共有者全員の協力が必要です。自分の持分だけを処分できる場合はありますが、その後のトラブルの原因になる可能性もありますので慎重な判断が必要です。
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実家に住む兄弟へ単独名義を移せますか?
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全員が合意すれば、遺産分割や持分移転により単独名義にできる場合があります。すでに登記済みか、対価を払うかにより手続や税務上の扱いが変わるため、個別確認が必要です。
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遺産分割が3年以内にまとまらないと罰則がありますか?
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相続登記の義務と遺産分割の成立は別の問題です。期限までに最終的な分割ができない場合も、相続人申告登記などの対応を検討します。正当な理由なく義務に違反した場合は過料の対象となる可能性があります。
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共有名義の話し合いがすでに対立しています。司法書士へ依頼できますか?
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合意内容に基づく書類作成や登記は司法書士が扱えますが、対立する相続人との代理交渉や訴訟対応は弁護士の領域です。状況を確認し、適切な専門家をご案内します。
まとめ|共有登記の前に実家の将来まで決めましょう
実家を兄弟の共有名義にすることはできますが、売却、修繕、利用方法、次の相続で問題が表面化することがあります。
公平さを考えるなら、登記持分だけでなく、将来の管理負担と処分方法まで含めて比較することが大切です。
横濱つきあかり法務事務所では、相続人と不動産を確認し、相続登記だけでなく遺産分割協議書の作成も含めて進め方をご案内します。
関連記事:相続登記の必要書類は?遺言・遺産分割・法定相続別に司法書士が解説
実家の相続や共有名義でお悩みの方は、無料相談をご利用ください。ご事情を伺い、必要に応じて税理士・弁護士との連携が必要な範囲もわかりやすくお伝えします。
🖋この記事の監修者
司法書士・行政書士 小林信之介
横濱つきあかり法務事務所
借金問題(債務整理)・相続手続きなどを中心に対応しています。





