自己破産の自由財産拡張とは?残せる財産・申立ての注意点を司法書士が解説
「自己破産をすると、預金も保険もすべて処分されるのだろうか」
「仕事や生活に必要な財産だけでも残したい」
このような不安から、相談をためらう方は少なくありません。
結論からいうと、自己破産をしても、すべての財産が処分されるわけではありません。法律上、破産手続の対象にならない「自由財産」があり、裁判所の判断によって自由財産の範囲が拡張されることがあります。
ただし、自由財産拡張は、希望すれば必ず認められる制度ではありません。財産の種類や金額、生活状況、今後の収入、扶養家族、健康状態などを踏まえて、破産管財人の意見を聞いたうえで裁判所が個別に判断します。
この記事では、自由財産と自由財産拡張の違い、対象になり得る財産、申立て前に避けたい行動を司法書士が分かりやすく解説します。
この記事でわかること
- 自己破産でも残せる自由財産の基本
- 自由財産拡張を申し立てる目的
- 預金・保険・車などがどう扱われるか
- 判断で考慮される事情
- 相談前にしてはいけない財産処分

自己破産でも生活に必要な財産は一定範囲で残せる
自己破産は、破産者の財産をすべて取り上げる制度ではありません。
破産法では、破産手続開始時に破産者が持つ一定の財産が破産財団に属し、破産管財人による換価・配当の対象となります。一方、差押えが禁止されている財産や、一定範囲の現金などは破産財団に属さないため、本人の手元に残すことができます。
また、破産手続開始後に得た給与などの新得財産は、原則として破産財団に入りませんので、働いて収入を得ながら生活を立て直すことは可能です。
働きながら自己破産する場合の判断基準を確認する
自由財産とは何か
99万円以下の現金
破産法上、一定範囲の現金は自由財産とされています。ここでいう現金は手元にある現金を指し、銀行預金と同じ扱いではありません。
なお、預金を申立て直前に引き出せば必ず自由財産になる、という意味ではありません。不自然な出金は裁判所より使途を細かく確認され、財産隠しを疑われる原因にもなります。
差押禁止財産
生活に欠かせない衣服、寝具、家具、台所用品など、民事執行法で差押えが禁止されている財産は、原則として手元に残せます。
給与や年金についても差押禁止の規定がありますが、すでに口座へ入金されて預金となった後の扱いは単純ではありません。残高や入出金の経緯を正確に申告する必要があります。
破産手続開始後に取得した財産
破産手続開始決定後に働いて得た給与や、その後に取得した財産は、原則として新得財産です。
もっとも、開始前に原因がある退職金請求権や保険解約返戻金などは、開始後に受け取っても開始時点の財産として評価されることがありますので、受取時期だけで判断しないでください。
自由財産拡張とは?
自由財産拡張とは、本来は破産財団に属する財産について、破産管財人の意見を聞いたうえで裁判所が破産者の生活状況などを考慮し、自由財産として手元に残すことを認める制度です。
これは、破産後の経済生活を再建するために必要な財産を確保することが目的で、実際の運用や申立て方法、基準は裁判所によって異なることがあります。
よく紹介される「合計99万円まで手元に残せる」という説明も、全国一律に、どの財産でも当然に残せるという意味ではなく、裁判所や破産管財人が、財産の性質、金額、生活上の必要性、他の自由財産の有無などを確認し、個別に判断をします。
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自由財産拡張の対象になり得る主な財産
預貯金
家賃、食費、公共料金、医療費など、当面の生活に必要な預金について、自由財産拡張が必要になることがあります。
ただし、残高のすべてが当然に残るわけではありません。現金、保険、車など他の財産との合計や、今後の収入も裁判所が確認し判断されます。
生命保険の解約返戻金
解約返戻金のある保険は財産として評価されます。
医療上の理由で再加入が難しい、家族の保障に不可欠であるなどの事情が考慮される場合がありますが、契約を維持できるかは個別に判断されます。また、契約者貸付がある場合は、その残額も含めて資料をそろ得る必要があります。
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自動車
車の価値が低い場合や、通勤、通院、家族の介護などで必要な場合、手元に残すかどうかを裁判所が検討します。
一方、車のローンが残っていて所有権留保が付いている車(車検証の使用者ではなく所有者欄で確認できます)は、販売会社や信販会社により引揚げられることなります。そのため、自由財産拡張とは別の対応が必要です。
退職金見込額
在職中の退職金請求権は、将来の不確実性などを考慮して一定割合で評価される運用があります。ただし、勤務先の制度、勤続年数、退職時期、裁判所の運用で扱いが変わります。
また、既に退職し退職金を受け取っている場合は、預金や現金として評価される可能性があります。そのため、退職の予定がある場合は、退職する前に必ず専門家へ相談してください。
敷金返還請求権など
賃貸住宅の敷金や、その他の返還請求権も財産に含まれる可能性があります。退去予定がなく、現実に回収できる時期が先であるなど、事情を含めて評価されます。
自由財産拡張で考慮される主な事情
裁判所は、単に「残したい」という希望だけで自由財産の拡張を認めるわけではありません。
一般的には、次のような事情を確認し総合的に判断します。
- 財産の種類と現在の価値
- 住居費や生活費
- 給与など今後の収入
- 年齢、健康状態、通院の必要性
- 扶養家族の人数と家計状況
- その財産が生活や仕事に必要な理由
- 他に自由財産がどれだけあるか
- 債権者の利益との均衡
例えば、同じ価値の車でも、公共交通機関が充実した地域で趣味に使う場合と、通勤や家族の通院に不可欠な場合では、車を残したい事情が異なります。
そのため、必要性を説明するため、家計収支表、給与明細、診断書、通勤経路、保険資料、車検証、査定資料などが必要になることがあります。
申立て前に避けたい行動
預金を全額引き出す
「現金なら99万円まで残せる」と考え、申立て直前に預金を引き出すのは危険です。
不自然な資金移動は通帳や取引履歴などからさかのぼって確認されます。正当な生活費に使った場合も、領収書や使途の説明が必要です。
家族へ名義を移す
車、預金、保険などを家族名義へ変えても、実質的に本人の財産であれば調査されます。
無償や不相当な価格で名義を移した場合は、否認の対象となったり、免責判断へ影響したりするおそれがあります。
一部の債権者だけに返済する
親族や勤務先など、一部の債権者だけに返済すると、偏頗弁済として問題になることがあります。
財産を残したいときほど、自己判断で動かず、全体の財産と債務を整理してから方針を決めることが重要です。
司法書士へ相談する前に準備したい資料
次の資料があると、財産の状況を整理しやすくなります。
- すべての預金通帳とネット銀行の取引履歴
- 給与明細、源泉徴収票
- 保険証券、解約返戻金証明書
- 車検証、ローン契約書、査定資料
- 退職金規程、退職金見込額証明書
- 賃貸借契約書
- 家計収支表
- 不動産の登記事項証明書、固定資産税資料
資料が全部そろうまで相談を待つ必要はありません。分かる範囲の一覧を作り、手元にある書類を持参してください。
よくある質問
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自己破産では99万円まで必ず残せますか?
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「どの財産でも合計99万円まで必ず残せる」という意味ではありません。現金と預金は扱いが異なり、自由財産拡張の運用も裁判所によって異なるため、個別確認が必要です。
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預金を現金に変えれば残せますか?
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申立て直前の不自然な引出しは、使途や経緯を確認されます。財産を隠す目的の行為はしてはいけません。
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通勤に必要な車は残せますか?
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価値、ローンの有無、通勤に必要な理由、他の交通手段などを踏まえて判断されますので、必ず残せるとは限りません。
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自由財産拡張はいつ申し立てますか?
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申立ての時期や方法は裁判所の運用や事件の進行で異なります。自己破産の申立て準備段階で専門家へ相談し、資料をそろえることが大切です。
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自由財産拡張が認められない場合はどうなりますか?
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対象財産は換価・配当の対象となる可能性があります。買戻しなど別の対応が可能かは、破産管財人や裁判所の判断を含め個別に検討します
まとめ|財産を隠さず、残す必要性を早めに整理する
自己破産をしても、自由財産や新得財産は原則として手元に残せます。さらに、生活再建に必要な財産について、自由財産拡張が認められる可能性があります。
ただし、対象や範囲は破産管財人の意見を聞いたうえで裁判所が個別に判断をします。預金の引出しや名義変更を先に行うと、かえって手続きが難しくなることがあります。
横濱つきあかり法務事務所では、借金と財産、収入、家計を確認し、任意整理・個人再生・自己破産などご状況に合った解決方法をご案内します。支払いがまだ延滞していない段階でもご相談ください。
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🖋この記事の監修者
司法書士・行政書士 小林信之介
横濱つきあかり法務事務所
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