個人再生の清算価値とは?預金・保険・車・退職金で返済額が増える理由を司法書士が解説

「借金400万円なら、個人再生で100万円まで減るのだろうか」

「預金や生命保険があると、個人再生はできないのか」

結論からいうと、個人再生の返済総額は借金額だけでは決まりません。本人の財産を処分したと仮定した場合に債権者へ配当できる金額、つまり「清算価値」以上を返済する必要があります。

法律上の最低弁済額が100万円でも、清算価値が180万円なら、原則として180万円以上を返済する計画が必要です。

ただし、個人再生は自己破産のように財産の換価を目的とする手続きではありません。預金や保険、ローンのない車などを持ちながら手続きを進められる場合があります。その代わり、財産の価値が返済額へ反映される仕組みです。

この記事では、対象になる財産、返済額の具体例、申立て前の注意点を司法書士が解説します。

この記事でわかること

  • 清算価値と最低弁済額の違い
  • 預金・保険・車・不動産・退職金の考え方
  • 財産がある場合の返済額の計算例
  • 配偶者名義の財産や住宅ローンの注意点
  • 個人再生の相談前に準備する資料

個人再生の清算価値とは

清算価値とは、本人の財産を清算して債権者への返済に充てると仮定した場合の価値です。

裁判所は、個人再生の返済総額について、財産を処分して返済に充てる場合の額を上回らなければならないと案内しています。これを「清算価値保障原則」と呼びます。

個人再生には主に、次の三つの金額が関係します。

確認する基準内容返済額への影響
法律上の最低弁済額住宅ローンを除く借金総額に応じた基準最低限返す金額の出発点
清算価値預金・保険・車など本人の財産価値最低弁済額より高ければ返済額が上がる
可処分所得の2年分給与所得者等再生で確認する基準他の基準より高ければ返済額が上がる

「借金を5分の1にする手続き」とだけ考えると、実際の返済見込額とずれることがあります。借金総額、財産、選ぶ手続きの種類を一緒に確認することが必要です。

清算価値に含まれる可能性がある主な財産

評価方法や提出資料は、裁判所や財産の種類などで異なります。自己判断で合計せず、資料を早めに集めましょう。

預金・現金

本人名義の預金は、使っていない口座も含めて確認します。給与口座、ネット銀行、定期預金などを一覧にし、取引履歴を用意します。

申立て直前に家族の口座へ移しても、財産でなくなるわけではありません。不自然な出金は使い道の説明を求められることがあります。

生命保険の解約返戻金

生命保険や学資保険などに、解約した場合に戻るお金があれば、財産価値として確認します。

保険を解約しなければならないとは限りません。解約返戻金の証明書を取り寄せ、基準日時点の金額を確認します。契約者と保険料負担者が異なる場合は契約関係も伝えてください。

自動車

ローンを完済した車は、査定額などを基に価値を確認します。高額なら清算価値が上がることがあります。

ローン中の車は、所有権が販売会社や信販会社に残っていると引き上げの問題が生じます。単に査定額からローン残高を引けばよいとは限らないため、車検証と契約書を確認しましょう。

不動産

自宅などの不動産は、査定額から住宅ローンなどの被担保債権を考慮して価値を確認します。共有持分がある場合や、査定額とローン残高が近い場合も資料が必要です。

住宅ローン特則を使って自宅を残せる場合でも、自宅の実質的な価値が清算価値へ影響する可能性があります。固定資産税評価証明書、査定書、住宅ローン残高証明書などを用意します。

退職金の見込額

現在退職する予定がなくても、退職金を受け取る権利の一部が財産として評価されることがあります。

ただし、退職時期、支給の確実性、勤務先の制度、申立先の裁判所の運用などで扱いは変わります。「退職金見込額の全額が返済額に加算される」「必ず一定割合になる」と一律にはいえません。

勤務先の退職金規程や見込額証明書が必要になる場合があります。勤務先に手続きの目的を伝えずに取得できる資料があるかも含め、司法書士へ確認してください。

株式・投資信託・暗号資産・過払い金など

証券口座の株式や投資信託、暗号資産、貸付金、過払い金返還請求権なども確認が必要です。価値が変動する財産は、どの時点の価格を使うかも重要になります。

借金400万円・清算価値180万円の計算例

考え方を単純な例で確認します。

住宅ローンを除く借金が400万円で、法律上の最低弁済額が100万円になるケースを想定します。

財産の例評価額の例
預金40万円
生命保険の解約返戻金35万円
ローンのない車45万円
退職金見込額のうち評価対象となる額60万円
合計180万円

この例では、最低弁済額100万円より清算価値180万円の方が高いため、返済総額は原則として180万円以上になります。

仮に180万円を3年間・36回で返済すれば、単純計算で月5万円です。100万円なら月約27,800円ですから、財産評価によって月額にも大きな差が出ます。

ただし、これは仕組みを示すための概算です。実際には、各財産の評価基準、基準日、控除の有無、再生委員の意見、裁判所の運用などを確認します。表の金額を単純に足せば必ず清算価値になるわけではありません。

財産があると個人再生できないわけではありません

清算価値が高くても、それだけで個人再生を利用できないわけではありません。清算価値以上の返済計画を立て、家計から継続して支払えるかが問題になります。

一方、清算価値が高く、計画どおりの返済が難しい場合は、任意整理や自己破産も含めて比較が必要です。

また、配偶者や家族が自分の収入で取得した固有の財産は、本人の財産へ当然に加算されるものではありません。ただし、本人から多額の資金を移した、実質的には本人が購入した、共有名義であるといった事情があれば確認が必要です。

申立て前に財産を動かさないことが大切です

返済額を下げたいからといって、預金を家族へ移す、車を相場より安く売る、保険を急いで解約する、名義を変更するといった行動は避けてください。

財産の移動自体が問題になるだけでなく、通帳、契約書、領収書などの追加資料が必要になり、説明が難しくなることがあります。

反対に、毎月の生活費として通常どおり支出することまで一律に禁止されるわけではありません。大きな入出金、売却、解約を予定している場合は、行動する前に相談してください。

個人再生の相談前に準備したい資料

最初の相談では、次の資料があると返済見込額を検討しやすくなります。

  • 借入先と残高が分かる明細
  • すべての通帳・ネット銀行の取引履歴
  • 保険証券と解約返戻金の資料
  • 車検証、自動車ローン契約書、査定資料
  • 不動産の登記事項証明書、査定資料、ローン残高
  • 退職金規程や見込額が分かる資料
  • 給与明細、源泉徴収票、家計表

すべてがそろっていなくても相談できます。まず、持っている財産と借金を隠さず伝えることが重要です。

司法書士は、借金額と財産資料を整理し、任意整理・個人再生・自己破産の方向性を比較します。個人再生を選ぶ場合は、裁判所へ提出する申立書類の作成を支援します。

よくある質問

個人再生をすれば借金400万円は必ず100万円になりますか?

必ずではありません。清算価値が100万円を超える場合や、給与所得者等再生で可処分所得の2年分が高くなる場合は、返済総額が100万円を超えることがあります。

清算価値に含まれた財産は処分されますか?

個人再生は財産の換価を目的とする手続きではないため、直ちに処分されるわけではありません。ただし、ローン中の車の所有権留保など、契約に基づいて引き上げが問題になる場合はあります。

配偶者名義の預金も清算価値に入りますか?

配偶者が自分の収入で貯めた預金は、本人の財産へ当然に入るものではありません。ただし、本人のお金を移した場合や名義と実態が異なる場合は説明が必要です。

退職金見込額証明書を取ると会社に個人再生が知られますか?

証明書の取得だけで手続きの内容まで必ず伝わるとは限りません。就業規則や退職金規程から計算できる場合もあるため、勤務先へ依頼する前に必要書類を確認しましょう。

生命保険は個人再生前に解約した方が良いですか?

自己判断で解約する必要はありません。まず解約返戻金額を確認し、保障を残す必要性と返済計画への影響を比較してください。

まとめ|借金額だけでなく財産を確認して返済計画を立てましょう

個人再生では、法律上の最低弁済額だけでなく、清算価値以上の返済が必要です。

預金、保険の解約返戻金、車、不動産、退職金見込額の一部などがあると、想定より返済総額が高くなる場合があります。

それでも、財産があるから個人再生ができない、財産を必ず処分しなければならない、という意味ではありません。大切なのは、財産を正確に評価したうえで、継続できる返済計画を立てることです。

個人再生の返済見込額を知りたい方へ

横濱つきあかり法務事務所では、借金問題の無料相談を受け付けています。

「任意整理では月額が高い」「家や車、保険を残したい」「退職金が返済額へどう影響するか知りたい」という段階でもご相談ください。

借金総額、収入、生活費、住宅ローン、財産を確認し、個人再生で返済できるか、ほかの方法を比較すべきかをご案内します。

相談したからといって、必ず依頼する必要はありません。

🖋この記事の監修者
司法書士・行政書士 小林信之介
横濱つきあかり法務事務所
借金問題(債務整理)・相続手続きなどを中心に対応しています。

※本記事は一般的な情報を解説したものです。清算価値の評価方法、必要資料、返済額は、申立先の裁判所、財産の種類、取得・処分時期、選択する手続きなどによって異なります。

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