自己破産で車・持ち家・保険・預金はどうなる?残せる財産と残せない財産を司法書士が解説

自己破産を考えたとき、特に気になるのが「車は残せるのか」「家はどうなるのか」「保険や預金まで全部なくなるのか」という点ではないでしょうか。

結論からいうと、自己破産をしても、すべての財産が必ずなくなるわけではありません。
一方で、持ち家のように原則として残しにくい財産もあります。現金や生活に必要な一定の財産は手元に残せる一方、預金や解約返戻金のある保険、不動産などは処分の対象になることがあります。もっとも、実際の扱いは財産の内容や金額、ローンの有無、裁判所の運用によって変わります。

この記事では、自己破産で「残せる財産」と「残せない財産」の基本を、車・持ち家・保険・預金に分けてわかりやすく解説します。

自己破産をしても、すべての財産がなくなるわけではありません

自己破産は、裁判所が破産手続開始を決定し、債務者の財産を換価して債権者に配当する手続です。
ただし、破産後の生活まで成り立たなくしてしまう制度ではありません。法律上、差押禁止財産や一定額の金銭は破産財団に入らず、生活再建のために手元へ残せる仕組みがあります。破産法は、民事執行法131条3号の額に「二分の三」を乗じた金額を自由財産とし、民事執行法施行令はその元となる額を66万円と定めているため、現金99万円が基準になります。

また、裁判所の運用上は、財産が少ない場合は「同時廃止」、一定以上の財産がある場合などは「管財事件」として進みます。たとえば東京地裁のFAQでは、33万円以上の現金や、20万円以上の換価対象資産(預貯金、保険の解約返戻金、未払賃金など)がある場合を、原則として管財事件で扱う例として示しています。地域差はありますが、「どの財産がどの程度あるか」が重要だと考えると分かりやすいです。

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自己破産で車はどうなる?

ローンが残っている車は、残しにくいのが原則です

車にローンが残っている場合は、契約上「所有権留保」が付いていることが多く、自己破産で支払いを止めると、その車を維持するのが難しくなることがあります。裁判所の申立書案内でも、所有権留保の有無やオーバーローンかどうかの確認が求められています。つまり、ローン中の車は「自分の財産だから当然に残せる」とは考えない方が安全です。

ローンがない車でも、価値が高ければ処分対象になることがあります

ローンがない車でも、価値が高ければ処分対象になる可能性があります。自動車を所有している場合は車検証等の提出が必要で、裁判所は原則として査定書で評価額を確認します。一方で、製造から10年以上経過して評価額がゼロといえる場合は、査定書を省略できることもあります。

そのため、古くて値段がつきにくい車なら残せる可能性がありますが、比較的新しい車や査定額が高い車は残しにくい、という理解が実務に近いでしょう。

家族名義の車を使っている場合も、きちんと確認が必要です

自分の名義ではない車でも安心、とは限りません。裁判所は誰の財産なのかを明確にする必要があるため、同居者や第三者名義の車を使用している場合でも、所有者確認のため車検証等のコピー提出を求めることがあります。

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自己破産で持ち家はどうなる?

持ち家は原則として残しにくいです

自己破産で最も残しにくい財産の一つが持ち家です。松江地裁の案内では、土地・建物などの不動産を所有している場合、不動産の時価より相当多額の担保権が付いているときを除き、同時廃止は認められないとされています。つまり、不動産がある時点で、原則として「処分の対象になり得る重要財産」と見られやすいということです。

さらに、住宅ローンが残っている持ち家には抵当権が設定されているのが通常です。裁判所も、抵当権などの担保権を持つ債権者が不動産を売却して回収する手続として「担保不動産競売」を案内しています。住宅ローン付きの自宅は、自己破産でそのまま守るのが難しいケースが多いです。

例外的に、実質的な価値が乏しい場合もあります

もっとも、家の時価に比べて住宅ローン残高がかなり多く、売っても配当に回る見込みがほぼないような場合は、実質的な価値が乏しいと判断される余地があります。松江地裁も「時価より相当多額の担保権が設定されているとき」は例外として挙げています。
ただし、ここは評価方法や担保の内容で判断が分かれやすい部分です。持ち家を残したい気持ちが強い場合は、自己破産ではなく個人再生など他の手続を含めて検討した方がよいこともあります。

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自己破産で保険はどうなる?

ポイントは、解約返戻金があるかどうかです

保険は、入っているだけで必ず処分されるわけではありません。重要なのは、解約返戻金があるか、その金額はいくらかです。裁判所は、申立時点の保険・共済の解約返戻金の有無と額を、直近に発行された証明書などで正確に確認するよう求めています。また、未解約の保険だけでなく、過去2年以内に失効した保険まで記載対象とされ、解約返戻金計算書の提出が求められています。

つまり、終身保険や学資保険、積立型の保険などで解約返戻金がある場合は、自己破産で確認・評価の対象になります。逆に、解約返戻金がほとんどない保険や掛け捨て型中心の保険は、処分の問題が小さくなることがあります。

保険を残せる可能性があるケースもあります

保険は絶対に解約しなければならない、というわけでもありません。仙台地裁の委員会議事概要では、自由財産拡張の申立てにより、特別な事情があれば拡張を許可する場合があり、たとえば高齢で病身のため保険を解約すると再加入が難しいケースでは、保険を解約せずにすむ事例があると紹介されています。

そのため、医療上の必要性が高い保険や、家族の生活に強く関わる保険は、事情次第で残せる余地があります。自己判断で先に解約してしまう前に、返戻金額と必要性を整理して相談することが大切です。

自己破産で預金はどうなる?

預金は、99万円まで残せる“現金”とは別に考える必要があります

よくある誤解ですが、「99万円まで残せる」と聞いて、預金もそのまま99万円まで大丈夫だと思ってしまう方がいます。
しかし、法律上の基準はあくまで「金銭」であり、東京地裁のFAQでは、預貯金は保険の解約返戻金などと並ぶ「換価対象資産」の例として挙げられています。つまり、現金と預金は同じではなく、預金は別途評価されると考えた方が安全です。

東京地裁では20万円以上の預貯金がある場合を、原則として管財事件で扱う例としています。全国一律のルールではありませんが、預金は「残高があるだけで要注意」と考えておくと分かりやすいでしょう。

口座の動きも含めて正確な申告が大切です

預金は、残高だけでなく入出金の流れも大切です。裁判所は保有財産や直前の動きを確認するため、通帳や資料の提出を求めます。保険の解約や失効、自動車の処分についても、過去の処分歴の記載を求めている裁判所書式があります。自己破産の直前に慌てて預金を移したり、保険を解約したり、車を名義変更したりすると、かえって説明が難しくなることがあります。

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財産を残せるか不安なら、早めの相談が大切です

自己破産では、車・持ち家・保険・預金のどれも「あるかないか」だけで決まるわけではありません。
ローンの有無、査定額、解約返戻金、担保の状況、生活上の必要性などを整理して、はじめて見通しが立ちます。

司法書士に早めに相談するメリットは、単に書類を作ることだけではありません。
どの財産が問題になりそうか、自己破産が本当に最適なのか、個人再生や任意整理の方が合っていないかを含めて整理しやすくなる点にあります。特に「車を残したい」「家を手放したくない」「保険を解約したくない」という希望がある場合は、申立て前の見極めがとても重要です。

まとめ

自己破産で財産がどうなるかは、次のように考えると分かりやすいです。

車は、ローンが残っていると残しにくく、ローンがなくても価値が高ければ処分対象になりやすいです。
持ち家は、原則として残しにくい財産です。
保険は、解約返戻金の有無と金額が重要です。
預金は、現金99万円とは別に評価されるため注意が必要です。

一方で、自己破産をしても必ず何もかも失うわけではありません。
現金や生活に必要な財産は残せますし、事情によっては保険や車などに例外的な余地が出ることもあります。大切なのは、自己判断で動かず、先に状況を整理することです。

「この車は残せるのか」「保険を解約しないといけないのか」「家を手放さずに済む方法はないのか」など、財産に関する不安はとても多いです。
ただ、自己破産は財産の内容によって見通しが大きく変わります。

当事務所では、借金の状況だけでなく、車・持ち家・保険・預金などの財産状況も整理したうえで、どの手続が適しているかを分かりやすくご案内しています。
自己判断で解約や売却をする前に、まずはお気軽にご相談ください。

🖋この記事の監修者
司法書士・行政書士 小林信之介
横濱つきあかり法務事務所
借金問題(債務整理)・相続手続きなどを中心に対応しています。

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