亡くなった親宛てに請求書が届いたらどうする?慌てて支払う前に確認すべきことを司法書士が解説
亡くなった親宛てに、突然、クレジットカード会社、消費者金融、携帯電話会社、病院、役所などから請求書が届くことがあります。
このとき、
「親の借金だから子どもが払わないといけないのでは?」
「放っておくと裁判や差押えになるのでは?」
「少額なら払ってしまった方が安心では?」
と不安になる方は少なくありません。
しかし、結論からいうと、請求書が届いたからといって、すぐに支払ってはいけません。
亡くなった方の借金や未払い金は、相続の問題と深く関係します。
支払う前に、相続放棄できるか、時効の可能性がないか、本当に支払義務がある請求なのかを確認する必要があります。
この記事では、亡くなった親宛てに請求書が届いた場合に、支払う前に確認すべきことを司法書士が分かりやすく解説します。
亡くなった親宛てに請求書が届いたら、慌てて支払わない
亡くなった親宛てに請求書が届いた場合、まず大切なのは、慌てて支払わないことです。
特に、次のような行動は慎重にしてください。
・請求額の一部を支払う
・「後で払います」と電話で約束する
・分割払いの相談をする
・親の預金から支払う
・債権者に安易に書類を返送する
・相続財産を処分する
これらの行動をしてしまうと、事情によっては「相続する意思がある」と見られて、相続放棄が難しくなる可能性があります。
相続が発生した場合、相続人は、単純承認・相続放棄・限定承認のいずれかを選択することになります。裁判所も、単純承認は亡くなった方の権利や借金などの義務をすべて受け継ぐ手続き、相続放棄は権利や義務を一切受け継がない手続き、限定承認は相続財産の限度で債務を負担する手続きと説明しています。
つまり、請求書への対応を間違えると、あとから「相続放棄をしたい」と思っても、手続きに影響が出るおそれがあるのです。
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親の借金は子どもが必ず払う必要がある?
相続しなければ、原則として支払う必要はありません
親が亡くなったからといって、子どもが当然に親の借金を支払う必要はありません。
ポイントは、相続するかどうかです。
相続をする場合、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払い金などのマイナスの財産も引き継ぐことになります。
一方で、相続放棄をすれば、原則として親の借金や未払い金を引き継ぎません。
そのため、亡くなった親宛てに請求書が届いた場合は、まず次のように考えます。
・親の財産はどれくらいあるのか
・借金や未払い金はどれくらいあるのか
・相続した方がよいのか
・相続放棄をした方がよいのか
・すでに相続放棄の期限が過ぎていないか
この確認をしないまま支払ってしまうのは危険です。
支払う前に確認すべき5つのこと
1. その請求書は本当に親の債務なのか
まず確認すべきなのは、請求書の内容です。
請求書には、次のようなものがあります。
・クレジットカードの未払い
・消費者金融からの借入れ
・銀行カードローン
・携帯電話料金
・家賃の滞納
・医療費
・介護施設費
・税金や保険料
・保証人としての請求
・サブスクや通信サービスの未払い
中には、亡くなった後に発生した請求や、契約内容がよく分からない請求もあります。
また、古い借金の場合、債権回収会社や法律事務所から請求書が届くこともあります。
この場合も、請求元が変わっているだけで、元の借入れが親のものなのか、時効になっていないかを確認する必要があります。
請求書が届いたら、まず次の項目を確認しましょう。
・請求元の会社名
・元の契約会社
・契約日
・最後に支払った日
・請求金額
・利息や遅延損害金の内訳
・親本人の契約かどうか
・自分が保証人になっていないか
特に、自分が保証人や連帯保証人になっている場合は、相続とは別に支払義務が問題になることがあります。
2. 相続放棄の期限が過ぎていないか
相続放棄をする場合、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。裁判所の案内でも、相続放棄の申述はこの3か月以内にしなければならないとされています。
この3か月は、一般的に「熟慮期間」と呼ばれます。
ただし、単に「親が亡くなった日から必ず3か月」という単純な話ではありません。
たとえば、親と長年疎遠で、亡くなったことを後から知った場合や、亡くなったことは知っていたものの借金の存在を後から請求書で知った場合などは、事情によって検討の余地があります。
もっとも、期限の判断は非常に重要です。
「もう3か月を過ぎているから無理」と自己判断するのも危険ですし、反対に「まだ大丈夫」と放置するのも危険です。
請求書が届いたら、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
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3. 親の財産と借金のどちらが多いか
請求書が届いた場合でも、必ず相続放棄をした方がよいとは限りません。
たとえば、親に預貯金や不動産があり、借金よりも財産の方が多い場合は、相続した方がよいケースもあります。
一方で、財産がほとんどなく、借金や未払い金が多い場合は、相続放棄を検討すべきです。
確認すべき財産には、次のようなものがあります。
・預貯金
・不動産
・車
・株式、投資信託
・生命保険
・退職金
・現金
・貴金属
・家財道具
確認すべき負債には、次のようなものがあります。
・消費者金融
・カードローン
・クレジットカード
・住宅ローン
・自動車ローン
・家賃滞納
・医療費
・税金
・保証債務
相続財産の調査に時間がかかり、3か月以内に判断できない場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てることで、期間を伸ばしてもらえる場合があります。裁判所も、相続財産の状況を調査しても判断できない場合には、申立てにより3か月の熟慮期間を伸長できると案内しています。
4. 古い請求なら時効援用できないか
亡くなった親宛ての請求書には、かなり昔の借金が含まれていることがあります。
たとえば、次のようなケースです。
・10年以上前の消費者金融の借金
・昔のクレジットカードの未払い
・長期間返済していなかったカードローン
・債権回収会社から突然届いた通知
・遅延損害金で金額が大きくなっている請求
このような場合、消滅時効が完成している可能性があります。
時効が完成している場合は、「時効援用」という手続きをすることで、支払義務を免れられる可能性があります。
ただし、時効の可能性がある請求でも、安易に電話をして、
「少しずつ払います」
「分割にしてください」
「支払う意思はあります」
などと伝えてしまうと、時効援用が難しくなることがあります。
古い請求書が届いた場合は、支払う前に、最後の返済日や裁判の有無を確認しましょう。
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5. 自分が相続人なのかを確認する
請求書が届いたとしても、そもそも自分が相続人なのかを確認する必要があります。
相続人になる可能性があるのは、主に次の人です。
・配偶者
・子ども
・親
・兄弟姉妹
・甥、姪
たとえば、親が亡くなった場合、基本的には子どもが相続人になります。
しかし、先順位の相続人が相続放棄をすると、次順位の親族に相続権が移ることがあります。
その結果、兄弟姉妹や甥・姪に請求書が届くこともあります。
「自分には関係ない」と思って放置していると、相続放棄の期限が進んでしまうことがあります。
特に、疎遠だった親族の請求書が突然届いた場合は、早めに相続関係を確認しましょう。
請求書が届いた後にやってはいけないこと
親の預金から支払う
亡くなった親の預金を使って請求書を支払うことは、特に注意が必要です。
相続放棄を検討している場合、親の財産を使う行為が問題になる可能性があります。
少額の支払いであっても、自己判断で行うのは避けた方が安全です。
債権者に支払う約束をする
債権者から電話が来ると、つい
「確認して払います」
「少し待ってください」
「分割なら払えます」
と言ってしまうことがあります。
しかし、このような発言は、相続放棄や時効援用に影響する可能性があります。
電話では、次のように伝えるにとどめましょう。
「相続関係を確認中です」
「専門家に相談してから回答します」
「現時点では支払いの約束はできません」
請求書を無視し続ける
支払ってはいけないからといって、完全に無視してよいわけではありません。
請求書を放置すると、次のようなリスクがあります。
・督促が続く
・訴訟や支払督促に進む
・他の相続人にも請求が行く
・相続放棄の期限を過ぎる
・財産調査が間に合わなくなる
大切なのは、支払う前に、正しく確認することです。
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相続放棄を検討した方がよいケース
次のような場合は、相続放棄を検討した方がよい可能性があります。
・親に借金がある
・財産より借金の方が多い
・財産がほとんどない
・複数の請求書が届いている
・債権回収会社から通知が来ている
・親が保証人になっていた可能性がある
・税金や家賃の滞納がある
・親と疎遠で財産状況が分からない
相続放棄をすると、原則として、親の借金や未払い金を引き継がなくて済みます。
ただし、相続放棄は家庭裁判所での手続きが必要です。
単に債権者へ「相続放棄します」と伝えるだけでは、正式な相続放棄にはなりません。
裁判所の案内でも、相続放棄をするには家庭裁判所に申述しなければならず、申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所とされています。
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既に支払ってしまった場合はどうする?
亡くなった親宛ての請求書を、既に一部支払ってしまったという方もいると思います。
この場合でも、すぐに諦める必要はありません。
確認すべきポイントは次のとおりです。
・誰のお金で支払ったのか
・親の預金から支払ったのか
・自分のお金で支払ったのか
・支払った金額はいくらか
・どのような理由で支払ったのか
・他の相続財産を処分していないか
・債権者にどのような説明をしたのか
状況によっては、まだ相続放棄を検討できる余地がある場合もあります。
反対に、対応を誤ると不利になることもあります。
すでに支払ってしまった場合も、追加で支払う前に専門家へ相談してください。
司法書士に相談するメリット
亡くなった親宛てに請求書が届いた場合、司法書士に相談するメリットは大きく分けて4つあります。
1. 相続放棄できるか確認できる
相続放棄には期限があります。
司法書士に相談することで、相続放棄の期限、必要書類、家庭裁判所への申述書作成などを確認できます。
2. 請求書の内容を整理できる
請求元、金額、契約内容、時効の可能性などを整理できます。
特に、古い借金や債権回収会社からの通知は、時効援用の可能性も含めて確認が必要です。
3. 債権者への対応を相談できる
「何と返事をすればよいか分からない」
「電話が来て怖い」
「支払わないといけないと言われた」
このような場合でも、専門家に相談することで、落ち着いて対応できます。
4. 相続と借金問題をまとめて相談できる
親の請求書が届いた場合、相続放棄だけでなく、時効援用、債務整理、保証債務、裁判対応などが関係することがあります。
司法書士に相談すれば、相続と借金の両面から、今後の対応を整理できます。
まとめ
亡くなった親宛てに請求書が届いた場合、最初にすべきことは、慌てて支払うことではありません。
まず確認すべきことは、次の5つです。
・本当に親の債務なのか
・相続放棄の期限が過ぎていないか
・親の財産と借金のどちらが多いか
・古い請求なら時効援用できないか
・自分が相続人なのか
請求書が届くと不安になりますが、支払う前に確認すれば、相続放棄や時効援用などの方法が見つかる可能性があります。
特に、亡くなった方の借金や未払い金は、相続の判断に大きく関わります。
少額だからといって安易に支払わず、まずは専門家に相談することをおすすめします。
亡くなった親宛てに請求書が届いてお困りではありませんか?
横濱つきあかり法務事務所では、相続放棄、借金の請求、時効援用、債権回収会社からの通知などについてご相談をお受けしています。
「払うべきか分からない」
「相続放棄できるか知りたい」
「古い借金の請求が届いた」
「債権者から電話が来て不安」
このような場合は、支払う前にご相談ください。
🖋この記事の監修者
司法書士・行政書士 小林信之介
横濱つきあかり法務事務所
借金問題(債務整理)・相続手続きなどを中心に対応しています。
