遺言で相続人以外に不動産を遺贈されたら?遺贈登記・遺言執行者・必要書類を司法書士が解説
遺言書に「自宅を内縁の妻に遺贈する」、「土地を世話になった甥に遺贈する」と書かれていても、不動産の名義が自動的に変わるわけではありません。
不動産を受け取る人が法定相続人ではない場合、一般的には「相続登記」ではなく、遺贈を原因とする所有権移転登記を行います。
この遺贈登記は、遺言執行者がいるか、遺言者の相続人が協力できるかによって申請方法が変わります。相続人以外の受遺者が一人で当然に申請できるとは限りません。
遺言書を見つけたら、不動産を処分したり相続人へ署名を求めたりする前に、遺言の種類、文言、遺言執行者の指定、不動産の登記内容を確認しましょう。
この記事でわかること
- 相続人以外へ不動産を遺贈した場合の登記方法
- 「相続させる」と「遺贈する」の違い
- 遺言執行者がいる場合といない場合の申請人
- 遺贈登記で準備する主な書類と費用
- 相続人の協力を得られないときの対応
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相続人以外が不動産を受け取るときは「遺贈登記」
遺贈とは、遺言によって財産を無償で譲ることです。遺贈を受ける人を「受遺者」といいます。
受遺者は、親族に限られません。内縁の配偶者、相続人ではない孫、友人、法人などを指定することもできます。
法定相続人でない人には相続権がありません
内縁の配偶者や長年介護をした知人でも、法定相続人でなければ、遺言がない限り不動産を相続できません。
遺言により不動産を取得することになった場合は、その遺言を登記原因証明情報として、遺贈登記を申請します。
「相続させる」と「遺贈する」は登記手続が異なる
遺言書の表現と受取人の立場により、登記の原因や申請方法が変わります。
法定相続人に対して「相続させる」と記載した場合は、通常、相続を原因とする登記をその相続人が単独で申請します。
一方、相続人以外の人へ「遺贈する」と記載した場合は、原則として受遺者と登記義務者が共同で遺贈登記を申請します。
遺言の一部分だけで決めず、全文と家族関係を確認することが重要です。
関連記事:遺言書が見つからないときの探し方
遺贈登記は誰が申請する?
相続人以外の受遺者への遺贈登記は、受遺者だけでは完結しないことがあります。
遺言執行者がいる場合
遺言執行者が指定され、就任している場合は、一般的に受遺者を登記権利者、遺言執行者を登記義務者として共同申請します。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な手続を行う人です。不動産の遺贈登記を予定するなら、遺言作成時に適切な人を指定しておくと手続を進めやすくなります。
遺言執行者がいない場合
遺言執行者がいないときは、原則として遺言者の相続人全員が登記義務者となり、受遺者と共同で申請します。
相続人が多い、遠方に住んでいる、疎遠であるといった事情があると、必要書類や委任状をそろえる負担が大きくなります。
家庭裁判所へ遺言執行者の選任を申し立てる方法もあるため、相続人全員の協力を得ることが難しいときは早めに方針を検討しましょう。
関連記事:遺言執行者がいない・動けないとき
相続人への遺贈には単独申請の特例がある
2023年4月1日から、遺贈によって不動産を取得した受遺者が遺言者の相続人である場合は、その受遺者が単独で遺贈登記を申請できるようになりました。
ただし、この特例は「受遺者が相続人である場合」です。相続人ではない受遺者について、同じように単独申請できるわけではありません。
遺贈登記で確認する主な書類
必要書類は、遺言書の種類、遺言執行者の有無、受遺者が相続人かどうかなどで変わります。
一般的には、次の資料を確認します。
- 遺言書
- 遺言者の死亡が分かる戸籍・除籍謄本
- 遺言者の住民票の除票または戸籍の附票
- 受遺者の住民票
- 不動産の固定資産評価証明書など評価額が分かる資料
- 不動産の登記事項証明書
- 遺言執行者の資格を証明する書類
- 登記義務者の印鑑証明書
- 委任状
自筆証書遺言は検認が必要なことがある
自宅で保管されていた自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所の検認を受けてから手続に使用します。
法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言や、公正証書遺言は検認が不要です。
検認は遺言の有効・無効を最終判断する手続ではありません。文言の解釈や形式に問題が疑われる場合は、登記申請前に専門家へ確認してください。
不動産の表示が現在の登記と合っているか確認する
遺言作成後に土地が分筆・合筆された、建物を建て替えた、住所表記が変わったなどの事情があると、遺言書と現在の登記が一致しないことがあります。
固定資産税の通知だけで判断せず、登記事項証明書や公図などで対象不動産を特定します。
遺贈登記の税金と期限の注意点
登録免許税は受遺者の立場で異なる
遺贈登記の登録免許税は、受遺者が相続人か相続人以外かによって税率が異なることがあります。
相続人以外への遺贈では、一般的に固定資産評価額に対して2%の税率が問題になります。具体的な税額は評価額と申請内容に基づいて計算してください。
また、不動産取得税や相続税・贈与税の扱いも、受遺者との関係や遺贈の内容によって変わります。税金の個別判断は税理士や都道府県税事務所へ確認する必要があります。
相続登記義務化と同じ期限だと決めつけない
相続人以外への遺贈登記には、相続登記義務化の「取得を知った日から3年以内」という規定が、そのまま同じ形で適用されるものではありません。
しかし、名義を故人のまま放置すると、相続人の死亡で関係者が増えたり、売却や担保設定ができなかったりするおそれがあります。期限がないように見えても、早めの登記が安全です。
関連記事:相続登記とは?義務化と手続の流れ
相続人が協力しないときはどうする?
相続人以外への遺贈では、遺言執行者がいないと相続人全員の関与が必要になることがあります。
相続人が遺言内容に納得していない、連絡が取れない、必要書類を出してくれない場合は、受遺者だけで署名や押印を補うことはできません。
まず遺言執行者選任の申立てが利用できるかを検討します。遺言の無効、遺留分、所有権そのものについて争いがある場合は、司法書士だけで代理交渉できないため、弁護士への相談が必要です。
遺贈を受けたくない場合は放棄の問題もあります。包括遺贈か特定遺贈かで扱いが異なるため、自己判断で放置せず早めに確認してください。
司法書士へ相談するメリット
司法書士は、遺言書と戸籍を確認し、受遺者が相続人かどうか、申請原因が相続か遺贈か、誰が共同申請人になるかを整理できます。
さらに、不動産の調査、必要書類の案内、登記申請書の作成、法務局への申請代理まで一連の手続を支援できます。
横濱つきあかり法務事務所では、遺言書と不動産資料を確認し、遺言執行者の選任が必要か、相続人の協力で進められるかを分かりやすく整理します。

よくある質問
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内縁の妻は遺言がなくても自宅を相続できますか?
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法定相続人ではないため、遺言がなければ原則として相続できません。生前に遺言を作成し、遺贈の内容や遺言執行者を明確にしておく方法を検討します。
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相続人以外の受遺者だけで遺贈登記できますか?
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原則としてできません。遺言執行者または遺言者の相続人全員と共同申請する形が一般的です。受遺者が遺言者の相続人である場合には、単独申請できる特例があります。
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遺言執行者が亡くなっていたら遺贈は無効ですか?
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遺言執行者が動けないことだけで、遺贈が直ちに無効になるわけではありません。家庭裁判所へ新たな遺言執行者の選任を申し立てる方法などを検討します。
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相続人が遺贈に反対していても登記できますか?
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有効な遺言があり、手続要件を満たせば、単に納得していないという理由だけで遺贈が消えるわけではありません。ただし、共同申請への協力が得られない場合や遺言の有効性を争われた場合は、遺言執行者の選任や訴訟手続を検討することがあります。
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遺贈登記を司法書士へ依頼できますか?
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はい。不動産登記の代理は司法書士の業務です。遺言書、戸籍、不動産資料を確認し、必要書類の収集から登記申請まで支援できます。紛争がある場合は弁護士、税務判断は税理士との連携が必要です。
まとめ|相続人以外への不動産遺贈は申請人を最初に確認
相続人以外の人が遺言で不動産を取得する場合は、通常の相続登記ではなく遺贈登記を行います。
遺言執行者がいれば受遺者と遺言執行者が共同申請し、いない場合は相続人全員の関与が必要になるのが基本です。
遺言の文言、受遺者の立場、不動産の現況によって必要書類や申請方法が変わるため、遺言書を見つけた段階で司法書士へ確認すると安心です。
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🖋この記事の監修者
司法書士・行政書士 小林信之介
横濱つきあかり法務事務所
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