相続人の一人が相続放棄したら相続登記はどうなる?持分・必要書類・期限を司法書士が解説
相続人の一人が家庭裁判所で相続放棄をすると、その人は法律上初めから相続人ではなかったものとして扱われます。
そのため、放棄した人の持分をほかの相続人へ単純に足すのではありません。残る相続人や、放棄によって新たに相続人となる人を確認し、法定相続分を計算し直してから相続登記を進めます。
相続登記では、通常の戸籍類に加えて、相続放棄申述受理証明書などが必要になることがあります。先順位の人が全員放棄すると、親や兄弟姉妹など次順位の人が相続人になる場合もあるため、自己判断で登記申請を急がないことが大切です。
この記事でわかること
- 相続放棄後に相続人と法定相続分がどう変わるか
- 放棄した人を遺産分割協議へ参加させる必要があるか
- 相続登記に必要な相続放棄の証明書と戸籍
- 次順位の相続人が現れるケース
- 相続登記の3年の期限と相談のタイミング

相続放棄した人は初めから相続人でなかった扱いになる
民法939条は、相続放棄をした人について、その相続に関して初めから相続人とならなかったものとみなすと定めています。
家族の話し合いで「私は財産を受け取りません」と伝えるだけでは、法律上の相続放棄にはなりません。家庭裁判所へ申述し、受理される必要があります。
遺産分割協議への参加は原則不要
家庭裁判所で相続放棄が受理された人は、原則として遺産分割協議の当事者ではありません。放棄した人の署名や実印を遺産分割協議書へもらうのではなく、放棄後に相続人となる人全員で協議します。
一方、「財産はいらない」と言っているだけで家庭裁判所の手続きをしていない人は、引き続き相続人です。その場合は、遺産分割協議への参加が必要です。
関連動画:相続放棄の注意点とは?期限・手続き・落とし穴を解説
相続放棄後は法定相続分を計算し直す
相続放棄があると、残った人の相続分が変わることがあります。
たとえば、亡くなった方に配偶者と子2人がいて、子の一人だけが放棄した場合、相続人は配偶者と残る子一人です。法定相続分は、配偶者が2分の1、残る子が2分の1となります。
放棄した子の2分の1を、その子の子どもが代襲相続するわけではありません。相続放棄では、放棄した人の子が代襲相続人になることはありませんのでご注意ください。
同順位の人が全員放棄すると次順位へ移る
亡くなった方の子全員が相続放棄すると、直系尊属である父母や祖父母が存命なら、その人たちが次に相続人となる可能性があります。
直系尊属がいない、または直系尊属も放棄した場合は、兄弟姉妹へ順位が移ることがあります。兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、その子である甥・姪が代襲相続人となる場合もあります。
このように相続人の範囲が広がると、集めなければならない戸籍が増え、遠方や疎遠な親族への連絡が必要になることがあります。
関連記事:相続登記の必要書類について
相続登記で必要になる主な書類
相続放棄した人がいる相続登記では、一般的に次の資料を確認します。
- 被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本
- 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
- 相続人の戸籍謄本
- 不動産を取得する人の住民票
- 固定資産評価証明書など評価額が分かる資料
- 遺産分割協議書と印鑑証明書(協議で取得者を決めた場合)
- 相続放棄申述受理証明書
事案によって、追加の戸籍、登記済権利証、上申書などが必要になることもあります。
受理通知書と受理証明書は別の書類
相続放棄の申述が受理されると、家庭裁判所から受理通知書が届きます。しかし、相続登記では相続放棄申述受理証明書の提出を求められることがあります。
受理証明書は、相続放棄を受理した家庭裁判所へ申請します。裁判所の案内では、証明書1通につき150円分の収入印紙が必要です。郵送申請では返信用封筒や郵便切手も用意します。
放棄した本人から証明書を受け取れない場合でも、利害関係人として申請できる場合があります。必要書類は裁判所や申請者との関係によって異なるため、事前に確認しましょう。
法定相続情報一覧図だけでは放棄を証明できない
法定相続情報一覧図は、戸除籍謄本などの記載に基づいて法定相続人を示す書類です。相続放棄の結果までは反映されないため、一覧図に放棄した人が記載されることがあります。
一覧図を使う場合も、相続放棄申述受理証明書などを別に用意する必要があります。
相続登記の期限は放棄の確認中でも進む
相続登記は、原則として不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があります。遺産分割で取得した場合も、その成立日から3年以内の申請が必要です。
相続放棄の有無や次順位の相続人が確定しないまま期限が近づくこともあります。その場合は、相続人申告登記を含め、期限内にできる対応を検討します。
関連記事:相続人申告登記とは?
数次相続になる前に整理する
相続登記をしない間に別の相続人が亡くなると、相続関係が二重、三重に広がる数次相続となることがあります。その場合は必要な戸籍や協議参加者が増え、手続きが長期化しやすくなります。
司法書士へ相談するとできること
司法書士は、戸籍を確認して相続人を特定し、相続放棄後の持分計算、必要書類の収集、遺産分割協議書の作成、相続登記申請を支援できます。相続放棄を検討中なら、家庭裁判所へ提出する書類の作成支援も可能です。
よくある質問
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相続放棄した人の印鑑は相続登記に必要ですか?
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家庭裁判所で相続放棄が受理された人は、原則として遺産分割協議へ参加しないため、協議書への実印や印鑑証明書は不要です。代わりに相続放棄申述受理証明書などで放棄を確認します。
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子が相続放棄すると孫が相続人になりますか?
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相続放棄した子の子が、その放棄を理由に代襲相続することはありません。ただし、ほかの事情により相続関係が変わる場合があるため、戸籍で確認が必要です。
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放棄した本人から証明書をもらえないと登記できませんか?
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利害関係人として家庭裁判所へ相続放棄申述受理証明書を申請できる場合があります。提出資料が必要になるため、受理した家庭裁判所へ確認してください。
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兄弟全員が放棄したらどうなりますか?
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兄弟姉妹が相続人となった後に全員が放棄し、ほかに相続人がいなければ、相続財産清算人の選任が必要になる場合があります。財産や管理状況により対応が異なります。
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相続放棄の手続きが終わるまで登記を待って良いですか?
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相続人を確定するため一定期間待つことはありますが、相続登記の期限も進みます。期限が近い場合は、相続人申告登記などを含め早めに専門家へ相談してください。
まとめ|相続放棄後は相続人を確定してから登記する
相続人の一人が相続放棄すると、その人は初めから相続人でなかったものとして扱われます。残る相続人の持分を計算し直し、場合によっては次順位の相続人まで戸籍で確認します。
相続登記では、相続放棄申述受理証明書が必要になることがあります。放棄した人を遺産分割協議へ参加させたり、放棄した人の子を当然に代襲相続人と考えたりせず、相続関係を正確に整理しましょう。
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🖋この記事の監修者
司法書士・行政書士 小林信之介
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