勤務先からの借金・社内貸付は債務整理できる?給与天引き・会社への影響を司法書士が解説
会社の社内貸付制度や従業員貸付から借りているお金も、原則として債務整理の対象になり得ます。
ただし、勤務先は毎月の給与を支払う相手でもあります。手続きの選び方によっては会社へ通知が届き、借金や債務整理の事実を知られる可能性があります。
結論として、会社への影響を抑えたい場合は、勤務先からの借金の契約先、残高、給与天引きの根拠、他の借金額を確認したうえで、任意整理・個人再生・自己破産のどれが適切かを早めに検討することが大切です。
勤務先からの借金だけを隠したり、会社だけに優先して返済したりすると、個人再生や自己破産で問題になることがあります。
この記事でわかること
- 勤務先からの借金が債務整理の対象になるか
- 任意整理で会社を対象から外せるか
- 個人再生・自己破産で会社に知られる可能性
- 給与天引きと給与差押えの違い
- 相談前に集めたい契約書や給与明細

まず確認したい「誰から借りているか」
給与明細に「貸付金返済」と表示されていても、実際の債権者が勤務先とは限りません。
主に次のような形があります。
- 勤務先が直接貸し付けている社内貸付
- 共済会、互助会、労働組合からの貸付
- 勤務先が提携・紹介した銀行や貸金業者のローン
- 勤務先が保証人となっている借入れ
- 給与の前払い・立替金
契約相手によって、通知先や会社への影響が変わります。まず借用書、金銭消費貸借契約書、給与明細、社内規程を確認しましょう。
勤務先からの借金も債務整理の対象になる
勤務先から借りたお金も、消費者金融やカード会社への借金と同じく債務です。
返済が難しい場合には、任意整理、個人再生、自己破産の検討対象になります。
「会社から借りたお金だから対象外」という扱いではありません。
一方で、手続ごとにすべての債権者を同じように扱う必要があるかどうかが異なります。
関連記事:債務整理方法の選び方
任意整理では勤務先を対象から外せることがある
任意整理は、裁判所を通さず、選んだ債権者と将来利息や返済期間などを交渉する手続きです。
そのため、ほかの借金だけを任意整理し、勤務先からの借金を対象から外せる場合があります。
関連記事:任意整理は一部の借金だけできる?
ただし、会社を外せば必ず安心とは限りません。
勤務先への返済を続けながら、ほかの債権者への和解後返済も続けられる家計でなければ、任意整理の計画が成り立ちません。給与天引き額が大きく生活費が不足している場合には、個人再生や自己破産を含めて検討する必要があります。
任意整理で会社に知られずに済むとは限らない
勤務先を任意整理の対象にしなければ、司法書士から会社へ受任通知を送らないため、直接知られる可能性は低くなります。
しかし、社内規程、保証関係、給与口座の状況などにより影響が出る場合があります。「絶対に知られない」とは断言できません。
関連記事:任意整理は会社にバレる?
個人再生では勤務先も債権者一覧に記載する
個人再生は、裁判所を利用し、原則としてすべての債権者を対象に返済額を見直す手続です。
勤務先が貸付金の債権者であれば、債権者一覧表に勤務先の名称、住所、借入残高などを記載します。そうすると、裁判所から手続きに関する書類が送られるため、会社が債務整理を知る可能性は高いです。
なお、勤務先だけを一覧から外したり、会社だけに返済を続けたりすることは手続き全体に影響が出る可能性が有るため、そのような行為は避ける必要があります。
会社だけ返すと偏頗弁済の問題が生じる
特定の債権者だけを優先して返済することを、偏頗弁済と呼びます。
会社に知られたくないという理由で、勤務先の借金だけを一括返済すると、個人再生の清算価値や手続きの進行に影響する可能性があります。
親族が代わりに返す案を考える方もいますが、資金の流れや返済時期を含めて、事前に専門家へ相談してください。
関連記事:個人再生で親族・知人からの借金も対象?
自己破産でも勤務先の借金を申告する
自己破産でも、勤務先からの借金を含むすべての債務を申告する必要があります。
勤務先が債権者なら、裁判所から破産手続に関する通知が届くため、会社に知られる可能性があります。
借金を隠すと、免責の判断や手続に悪影響を及ぼすおそれがあります。借用書がなくても、給与明細の控除欄、振込記録、社内メールなどから借入れの事実と残高を整理しましょう。
債務整理をしただけで解雇されるとは限らない
債務整理をしたことだけで、当然に解雇されるものではありません。
ただし、会社の貸付制度、就業規則、担当業務、借入れに至った事情によって個別の問題が生じる可能性があります。解雇や懲戒を示唆された場合には、労働問題を扱う弁護士や労働局への相談も検討してください。
給与天引きは止まる?給与差押えとの違い
給与天引きは、社内貸付の契約や労使協定などに基づき、給与から返済額を控除する仕組みです。
給与差押えは、債権者が判決などの債務名義を得て裁判所へ申し立て、給与の一部を取り立てる強制執行です。両者は別の制度です。
労働基準法第24条は賃金の全額払いを原則とし、法令に定めがある場合や書面による労使協定がある場合などに控除を認めています。
受任通知を送れば、すべての給与天引きが自動的に止まるとは限りません。誰が債権者か、控除の根拠、契約内容を確認し、必要に応じて勤務先と調整することになります。
相談前に準備したい資料
次の資料があると、手続の選択と会社への影響を検討しやすくなります。
- 社内貸付の契約書・借用書
- 現在の残高が分かる明細
- 給与明細(天引き項目が分かるもの)
- 就業規則・貸付制度の規程
- 会社、共済会、保証会社からの通知
- すべての借金の請求書・利用明細
- 家計収支と預貯金、保険、退職金などの資料
勤務先への借金だけで判断せず、借金総額、月々の返済額、収入、生活費、財産を全体で確認します。
関連記事:個人再生の必要書類について
司法書士に相談する際の注意点
認定司法書士は、簡易裁判所の管轄に属する範囲で任意整理の交渉を行えます。
個人再生や自己破産は地方裁判所の手続きであるため、司法書士は裁判所提出書類の作成支援を行います。訴訟代理や、会社との労働紛争の代理が必要な場合には、弁護士への相談が必要です。
勤務先への連絡時期や説明方法も含め、状況に合った順序を一緒に整理することが重要です。

よくある質問
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会社から借りたお金も任意整理できますか?
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対象にすることは可能です。ただし、受任通知や交渉により会社へ知られるため、ほかの債権者だけを対象にできるか、家計と返済可能性を確認して判断します。
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社内貸付を隠して個人再生できますか?
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できません。勤務先が債権者であれば、債権者一覧表への記載が必要です。意図的な記載漏れは手続に悪影響を及ぼす可能性があります。
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給与天引きは受任通知で必ず止まりますか?
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必ず自動的に止まるとは限りません。貸付主体、契約、社内規程、控除の根拠を確認し、個別に対応する必要があります。
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債務整理をすると会社を辞めなければなりませんか?
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債務整理をしただけで当然に退職が必要になるものではありません。就業規則や担当業務を確認し、懲戒などの問題が生じたときは労働問題の専門家へ相談してください。
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共済会からの借入れも会社の借金と同じですか?
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共済会が別の法人・団体であれば、債権者は勤務先ではなく共済会になることがあります。契約書や給与明細で貸付主体を確認してください。
まとめ
勤務先からの借金や社内貸付も、原則として債務整理の対象になり得ます。
任意整理では会社を対象から外せる場合がありますが、返済計画が成り立つことが前提です。個人再生や自己破産では、勤務先が債権者なら一覧に記載する必要があり、会社へ知られる可能性があります。
勤務先の借金を隠す、会社だけを優先して返すといった対応は避けましょう。契約書、給与明細、残高資料を用意し、ほかの借金も含めて早めに相談することが大切です。
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🖋この記事の監修者
司法書士・行政書士 小林信之介
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