会社員が自己破産すると仕事に影響する?会社への連絡・資格制限・退職金の注意点

会社員が自己破産をしても、それだけで会社を解雇されたり、給与を受け取れなくなったりするわけではありません。裁判所から勤務先へ一律に連絡が入る制度でもありません。

ただし、勤務先から借入れがある、すでに給与差押えを受けている、申立資料を会社に発行してもらう、仕事に法律上の資格制限がある、といった場合は会社に知られる可能性があります。退職金も、退職を強制されるのではなく、将来受け取る権利が財産として確認される点に注意が必要です。

この記事では、会社員が自己破産を考えるときに確認したい仕事への影響、会社に知られる場面、資格制限、退職金の扱いを分かりやすく解説します。

この記事で分かること

  • 自己破産をすると会社へ連絡が入るのか
  • 仕事を続けられるケースと資格制限が問題になるケース
  • 退職金がある場合の注意点
  • 会社に知られる可能性を抑えて準備をする方法
横濱つきあかり法務事務所

自己破産をしても通常は仕事を続けられる

自己破産は、返済できない借金を裁判所の手続で整理し、免責が認められれば支払義務の免除を受ける制度です。

破産手続を利用したこと自体を理由に、雇用契約が自動的に終了する仕組みはありません。事務職、営業職、技術職、製造職、医療・介護の一般職員など、多くの会社員はこれまでどおり働き続けることができます。

また、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。自己破産したという事実だけで、どのような解雇も認められるわけではありません。

もっとも、会社のお金を扱う職務で不正があった場合など、破産とは別の事情があれば判断は変わります。就業規則に自己破産に関する記載がある場合も、記載だけで直ちに有効と決まるわけではありませんが、個別の確認が必要です。

自己破産すると会社に連絡が入る?

裁判所が勤務先へ通知をするわけではない

申立書には勤務先や収入を記載し、給与明細、源泉徴収票などを提出します。しかし、裁判所が在籍確認のために勤務先へ電話や通知をするわけではありません。

破産手続開始決定などは官報に掲載されます。ただし、銀行や保険会社など大きな金額を日常的に業務上で扱う会社以外では、一般的な会社が社員全員について官報を日常的に確認しているとは限りません。

家族や会社へ知られたくないという希望がある場合は、隠して手続を進めるのではなく、知られる可能性がある経路を事前に洗い出すことが重要です。

会社に知られる可能性が高まる4つの場面

次のような事情があると、勤務先に知られる可能性が高まります。

  1. 勤務先や社内融資制度から借入れがある
  2. 債権者による給与差押えがすでに行われている
  3. 退職金見込額証明書などを会社へ請求する
  4. 法律上の資格・地位の制限が仕事に関係する

勤務先からの借入れも、原則として債権者一覧表への記載が必要です。勤務先だけを隠したり、特定の債権者だけ返済したりすると、手続上の問題になるおそれがあります。

給与差押えが始まっている場合は、第三債務者である会社に差し押さえに関する書類が裁判所より届くため、会社はすでに状況を把握しています。差押え前であれば、受任通知や申立てによって督促・訴訟への対応を早められることもあるため、放置せず相談してください。

自己破産で一時的に制限される仕事がある

自己破産による仕事への影響で注意したいのが、個別の法律で定められた資格や地位の制限です。

破産手続開始決定を受けて復権を得ていない間、警備員、保険募集に関する一部の立場、会社役員との委任関係など、業務や地位に影響が生じる場合があります。すべての資格が停止するわけではなく、同じ業界でも職種や登録上の立場によって扱いが異なります。

一般的な会社員の業務には、このような法律上の制限がないことが多いです。資格制限がある場合も、通常は一生続くものではなく、免責許可決定の確定などによって復権すれば制限が解消されます。
※自己破産を裁判所へ申し立てし「破産手続き開始の決定」が出された時点から「免責許可の決定」が出るまでの間が一時的に制限される期間ですので、自己破産を依頼したらすぐに制限されるというわけではありません。

大切なのは、職業名だけで自己判断しないことです。許認可、登録、役員の地位が関係する方は、申立て前に根拠法令と勤務先での担当業務を確認しましょう。

会社員の自己破産では退職金をどう扱う?

自己破産のために退職する必要はない

在職中の方が、自己破産のためだけに会社を辞めて退職金を受け取る必要は通常ありません。

一方、将来退職したときに受け取る退職金請求権は、財産として申告・評価の対象になることがあります。金額、退職までの期間、勤務先の制度、申立てをする裁判所の運用などにより扱いが異なります。

「退職金の何分の一を必ず支払う」と全国一律に決めつけることはできません。退職金が多い場合には、同時廃止ではなく管財事件となる可能性や、財産相当額の準備が必要になる可能性もあります。

退職金見込額は会社に聞かず確認できる場合もある

裁判所から、退職金見込額を確認できる資料の提出を求められることがあります。

会社発行の証明書が必要な場合もありますが、就業規則、退職金規程、勤続年数、現在の基本給などから計算し、説明資料を付ける方法が認められることもあります。必要書類と代替資料は裁判所や事案により異なるため、先に会社へ証明書を頼むのではなく、専門家へ確認すると安心です。

すでに退職して退職金を受け取っている場合は、預貯金や現金としての評価も関係します。受け取ったお金を親族へ移す、特定の借入先だけに返す、財産目録に記載しない、といった対応は避けてください。

会社員が自己破産を検討する時の確認事項

相談前に、次の情報を整理しておくと、仕事への影響と手続の見通しを確認しやすくなります。

  • 借入先、残高、毎月の返済額
  • 手取り収入と家計の支出
  • 勤務先や共済組合からの借入れの有無
  • 給与差押えや裁判所からの書類の有無
  • 職種、保有資格、登録上の地位
  • 勤続年数と退職金制度の有無
  • 預貯金、保険、自動車、不動産などの財産

勤務先を債権者一覧から外したい、退職金を申告したくないと考えても、独断で進めるのは危険です。会社への影響を抑えるためにも、最初から正確に事情を伝えて方針を検討しましょう。

任意整理で分割返済できる見込みがない場合でも、個人再生で一定額を返済する方法と、自己破産で免責を目指す方法では、仕事や財産への影響が異なります。安定収入があることだけで自己破産を選べないとは限りません。

よくある質問

自己破産をすると会社へ裁判所から電話が来ますか?

通常、すべての申立人について裁判所が勤務先へ電話するわけではありません。ただし、勤務先が債権者である場合、給与差押えがある場合、必要資料の確認が必要な場合などは、会社に知られる可能性があります。

自己破産を理由に解雇されますか?

自己破産だけで雇用が自動的に終了するわけではありません。もっとも、資格制限で担当業務を続けられない場合や、破産とは別の懲戒事由がある場合は個別の検討が必要です。

自己破産をすると給料は全額取り上げられますか?

自己破産後も働いて得た給与が、当然に全額取り上げられるわけではありません。生活再建のための収入として家計に使えますが、申立時点の未払給与や預金残高などは個別に確認が必要です。

退職金があると自己破産できませんか?

退職金制度があっても自己破産を申し立てることはできます。ただし、退職金請求権の評価額によって手続や必要な準備が変わる可能性があります。

会社に退職金証明書を頼みたくありません。ほかの資料で対応できますか?

退職金規程や就業規則、給与資料などから見込額を計算して説明できる場合があります。裁判所や事案によって必要資料が異なるため、会社へ依頼する前に専門家へご相談ください。

まとめ|仕事への影響を確認してから自己破産を進めよう

会社員が自己破産をしても、通常は仕事を続けられ、裁判所から勤務先へ一律に連絡されるわけではありません。

ただし、勤務先からの借入れ、給与差押え、資格制限、退職金資料の取得などによって、会社に知られたり業務調整が必要になったりする場合があります。退職金請求権も財産として扱われる可能性があるため、申立て前の確認が欠かせません。

横濱つきあかり法務事務所では、借入状況、収入、職種、資格、退職金制度を確認し、任意整理・個人再生・自己破産のうち生活再建に合う方法を一緒に整理します。

まだ給与から返済できている段階でも相談できます。勤務先に知られる可能性や必要資料が不安な方は、支払いが止まる前に無料相談をご利用ください。

🖋この記事の監修者
司法書士・行政書士 小林信之介
横濱つきあかり法務事務所
借金問題(債務整理)・相続手続きなどを中心に対応しています。

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