自己破産するとNISA・株式・iDeCoはどうなる?処分される資産と残せる年金を司法書士が解説
「借金の返済は苦しいが、将来のために積み立てたNISAまで失いたくない」
「会社の確定拠出年金やiDeCoも、自己破産で解約されるのだろうか」
このような不安から、相談を先延ばしにする方がいます。
結論からいうと、NISA口座の株式・投資信託は、税金が優遇される金融資産です。自己破産でも財産として申告し、金額や他の財産との合計によっては換価・処分の対象になる可能性があります。
一方、企業型確定拠出年金やiDeCoの給付を受ける権利には、確定拠出年金法で譲渡や差押えを禁止する規定があります。そのため、一般の証券口座やNISAとは異なる扱いになるのが原則です。
ただし、すでに年金を受け取って預金になっている場合や、似た名称でも別の制度である場合は結論が変わります。口座名だけで判断せず、商品と制度を一つずつ確認しましょう。
この記事でわかること
- 自己破産でNISA・株式・投資信託がどう扱われるか
- NISAとiDeCoの違い
- 企業型確定拠出年金やiDeCoが原則保護される理由
- 相談前に売却・移動してはいけない理由
- 司法書士へ相談するときに準備する資料

自己破産では所有する財産を正確に申告する
破産法では、破産手続開始時に本人が所有する財産は、原則として破産財団に属すると定められています。
破産財団とは、破産管財人が管理・換価し、債権者への配当などに充てる財産です。ただし、生活に必要な一定の財産や差押えが禁止されている財産などは除かれます。
自己破産をしたからといって、すべての財産が一律に処分されるわけではありません。財産の種類、価額、裁判所の運用、他の財産との合計などを確認して判断されます。
重要なのは、「少額だから」、「使っていない口座だから」と自己判断で省略しないことです。証券口座、NISA、勤務先の年金制度、iDeCoをすべて伝えてください。
関連記事:自己破産で残せる財産と自由財産拡張
NISAの株式・投資信託は財産として扱われる
NISAは資産を守る制度ではなく税金の優遇制度
NISAは、口座内で購入した株式や投資信託から得る配当・分配金や売却益を非課税にする制度です。
税金が非課税になることと、差押えや破産手続から保護されることは別です。NISA口座にある商品も、本人が所有する株式・投資信託であることに変わりはありません。
そのため、自己破産ではNISA口座の存在と保有商品を申告し、基準となる時点の評価額を確認します。金額によっては売却され、債権者への配当原資になる可能性があります。
「つみたて投資枠だから残せる」、「長期保有中だから評価しなくて良い」とは限りません。
通常の証券口座の株式・投資信託も同様に確認する
特定口座や一般口座で保有する国内株式、外国株式、投資信託、ETF、REITなども財産です。
申立て時には、証券会社名、口座番号、商品名、保有数量、評価額が分かる資料を準備します。取引残高報告書、保有商品一覧、取引履歴などが役立ちます。
株価や基準価額は日々変わります。どの時点の価格で評価するか、売却費用をどう扱うかは、申立先の裁判所や事件の状況に応じて確認が必要です。
含み損があっても口座を隠さない
購入時より値下がりしていても、現在の換価価値があれば財産として確認します。
「損をしているから価値がない」と考え、申告しないのは避けてください。証券口座に預り金や配当金が残っている場合もあります。
暗号資産、FX口座、従業員持株会、未上場株式なども忘れずに伝えましょう。評価方法は資産ごとに異なります。
iDeCo・企業型確定拠出年金はNISAと扱いが異なる
確定拠出年金の給付を受ける権利は差押えが禁止されている
iDeCoは個人型確定拠出年金です。勤務先を通じて加入する企業型確定拠出年金も、同じ確定拠出年金法に基づく制度です。
確定拠出年金法第32条は、給付を受ける権利について、原則として譲渡、担保提供、差押えを禁止しています。
破産法では、差押えが禁止されている財産は、原則として破産財団に属しません。そのため、iDeCoや企業型確定拠出年金の年金資産は、一般のNISAや証券口座とは異なり、原則として破産手続で換価されないと考えられます。
もっとも、「年金」、「積立」という名前だけで判断することはできません。個人年金保険、財形貯蓄、勤務先独自の退職金積立などは、確定拠出年金とは別制度です。
関連記事:自己破産すると退職金はどうなる?
すでに受け取った年金は扱いが変わる可能性がある
差押禁止の対象となるのは、原則として給付を受ける権利です。
一時金や年金として受け取り、普通預金口座に入金された後は、通常の預金として扱われる可能性があります。受給時期が近い方や、すでに一部を受け取った方は、入金日と残高が分かる資料を準備してください。
自己破産を理由にiDeCoを自由に解約できるわけではない
iDeCoは原則として一定年齢まで引き出せない制度です。自己破産をすること自体が、自由な中途解約の理由になるわけではありません。
掛金の支払いが家計を圧迫している場合は、掛金額の変更や拠出停止を検討します。金融機関や国民年金基金連合会の案内を確認し、家計全体を立て直すことが大切です。
相談前にNISAを売却・移動しても良い?
財産を隠す目的の売却や名義変更はしない
自己破産を考えた後に、NISAの商品を売却して現金化し、家族名義の口座へ移すことは避けてください。
財産隠しと評価されるおそれがあるだけでなく、免責の判断や破産管財人の調査に影響する可能性があります。
家族へ贈与する、相場より安く売る、現金で保管して申告しないといった対応も適切ではありません。
一部の債権者だけへ返済するのも注意が必要
投資商品を売却した代金で、家族や勤務先からの借入れだけを返すと、偏頗弁済として問題になる場合があります。
偏頗弁済とは、支払不能の状態で特定の債権者だけを優先して返済することです。後から返還を求められたり、免責手続へ影響したりする可能性があります。
売却代金を生活費に使う必要がある場合も、使途と金額を記録し、領収書や通帳を残してください。売却前に専門家へ相談するのが安全です。
関連記事:自己破産前にやってはいけないこと
自己破産の相談前に準備する資料
すべてを最初からそろえる必要はありません。まず次の資料を確認しましょう。
- NISA・特定口座・一般口座の保有商品一覧
- 証券会社の取引残高報告書
- 直近の取引履歴と入出金履歴
- 株式の配当金や投資信託の分配金が分かる資料
- iDeCoの加入者サイト画面や残高通知書
- 企業型確定拠出年金の残高通知書
- 従業員持株会や財形貯蓄の資料
- 預金通帳、保険、車、退職金など他の財産資料
- 借入先ごとの残高と毎月の返済額
証券会社が複数ある場合や、以前開設した口座が残っている場合も申告します。パスワードが分からないときは、口座開設時のメールや郵便物から会社名を確認してください。
NISAを残したい場合は他の債務整理も比較する
NISAなどの財産を残したい場合、任意整理や個人再生が候補になることがあります。
任意整理は、裁判所を通さず対象とする債権者と返済条件を話し合う手続きです。財産を換価する制度ではありませんが、和解後の返済を続けられる収入が必要です。
個人再生も、財産を直ちに処分する制度ではありません。ただし、保有財産の価値が「清算価値」として最低返済額に影響し、NISAや株式の評価額が高ければ返済額が上がる可能性があります。
財産を残せるかだけではなく、借金総額、手取り収入、家計、住宅ローン、今後の積立余力まで比較して手続きを選びます。
関連記事:任意整理・個人再生・自己破産の判断表
司法書士へ相談するメリット
横濱つきあかり法務事務所では、借金、収入、家計、NISAなどの財産を整理し、任意整理・個人再生・自己破産のどれが現実的かを検討します。
司法書士は、自己破産や個人再生の申立書類作成を支援できます。地方裁判所での代理人になるわけではありませんが、必要資料や財産目録の作成をサポートし、手続きの見通しをご説明します。
「NISAがあることを話すと、すぐ解約を求められるのでは」と心配する必要はありません。まず正確な評価額と他の財産を確認し、選択肢を比較することが大切です。
よくある質問
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NISAなら自己破産でも残せますか?
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NISAという理由だけで保護されるわけではありません。NISAは税制優遇制度であり、株式や投資信託は財産として申告し、金額などによっては換価対象になる可能性があります。
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含み損の株式も申告が必要ですか?
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はい。購入価格ではなく現在の評価額を確認するため、値下がりしている株式や投資信託も申告してください。
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iDeCoは自己破産で解約されますか?
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確定拠出年金の給付を受ける権利は、法律上、原則として差押えが禁止されています。そのため通常の証券資産とは扱いが異なりますが、加入制度と受給状況を資料で確認する必要があります。
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破産前にNISAを売って生活費に使えますか?
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必要かつ相当な生活費への使用が直ちに財産隠しになるとは限りませんが、時期、金額、使途が問題になります。売却前に相談し、領収書や通帳で使途を残してください。
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NISAを残すために個人再生を選べますか?
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個人再生は財産を直ちに処分する制度ではありません。ただし、NISAの評価額は清算価値へ影響し、最低返済額が増える場合があります。収入と返済可能額を含めた試算が必要です。
まとめ|NISAとiDeCoを分けて財産の扱いを確認する
NISAや通常の証券口座にある株式・投資信託は、自己破産では財産として申告し、評価額などによっては処分される可能性があります。
一方、iDeCoや企業型確定拠出年金の給付を受ける権利には差押禁止の規定があり、一般の投資資産とは異なる扱いが原則です。
相談前に資産を売却・移動したり、一部の借入先だけへ返済したりせず、まず保有商品と残高を整理してください。正確な情報があれば、財産への影響を含めて手続を比較できます。
ひとりで抱えず、まずはお話をお聞かせください
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横濱つきあかり法務事務所が、お話を丁寧に伺いながら状況を整理し、ご状況に合った解決方法を一緒に考えます。
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🖋この記事の監修者
司法書士・行政書士 小林信之介
横濱つきあかり法務事務所
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